2012 . 5.17 更新
記:小林(益久染織研究所)
何も説明なし、ただひたすら見るだけの修行。
朝暗いうちから始めて日の出までに
終えなくてはならない古代の染。
何かを体得・感得するということは
言葉を超えた世界で生きるということなのだろうか。
前田先生
「染師には紅師・紫師・茶師・藍師・黄師の5段階があって、紅師だけが秘伝・口伝を受け継ぐことができる。普通は、修行10年ぐらいで秘伝が与えられるものとされていました。
この秘伝の内容は、主として技術面のものであったが、本当に重要な点は除かれていたと思われる。
古代の染人たちの中には、その技術を残すためにいろいろな方法を考え出したようです。というのは、鎌倉時代には染に限らず、各種の技術、つまり金工にしても木工にしても、専門技術をもっているものの間に、秘伝とか口伝とかいわれる教義が発生しているからです。
鎌倉時代、およびそれ以降の時代における各種の技術の伝承は、 そのほとんどがこの教義にもとづく徒弟制度の上にたっていたとみていい。 “秘伝をぬすむ”とか“一子相伝”などの言葉が残っているが、これはこの徒弟制度下において、 その技術の習得がいかに難しく、かつ、また長年月にわたる努力と忍耐が必要であったかを、物語っている。
入門して3年ぐらいたった頃かなあ、鎌倉時代より代々伝えられてきた門外不出の『染色(そめいろ)の口伝』なる巻物を与えられました。巻物のなかは真っ白。何も書かれていない。口伝やからねえ。でもその真っ白な素(す)の紙には染師の心意気が込められているような気がします。」