製品に仕上がるまで

Cotton to Creation

① 綿を育てる

綿畑は、これまで一度も農薬や肥料を使ったことのない豊かな大地で、昔ながらの鍬や鎌を使って人の手で丁寧に耕されています。

栽培には「24節気」に基づく伝統的な農法を取り入れ、自然のリズムと調和しながら作物を育てています。
24節気とは、1年を24の区分に分け、約15日ごとに季節の微細な変化を捉える中国由来の暦で、日本でも古くから農業に活かされてきました。
この暦に従い、自然の移ろいに寄り添いながら作業を進めることで、土壌は健やかに保たれ、健康で丈夫な綿が育ちます。また、裏作にはニンニクを植え、自然の力で虫除けを行うなど、農薬に頼らない工夫をしています。

種まき

4月20日頃の穀雨に合わせて行います。畑に直接蒔く場合もあれば、清明(4月5日頃)から穀雨までの間に苗を作り、移植する場合もあります。種は3粒ずつ、約30cm間隔で蒔きます。

間引き

芽が出てからは、土が乾かないようこまめに水やりを行い、5〜10㎝ほどに成長したら、最も元気な苗を残して間引きを行います。

剪定

7月頃になると綿は急成長します。腰丈以上に伸びないように1番上の茎を剪定し、枝を横に伸ばします。そうすることで、綿の実が4〜5個実り、効率良く育ちます。

摘み取り

7月に美しい花が咲き、9〜11月頃になると、綿の実がはじけ、収穫の時期を迎えます。綿の実は、雨に打たれる前に一つひとつ手作業で摘み取られ、手で摘まれた綿の実は、繊維がきれいな状態を保ち、私たちの製品の品質にそのまま反映されます。

② 糸を紡ぐ

益久染織研究所では、昔ながらの「手紡ぎ」と、日本独自の技術「ガラ紡」という2つの方法で糸を紡いでいます。

手紡ぎ

手紡ぎ糸は、人の手と糸車を使って、ひとつひとつ優しく紡がれ、数千年前からその原理は変わることなく受け継がれてきました。熟練した職人でも、1日に約200g(タオル約2枚分)しか紡ぐことができないほど、時間と手間のかかる作業です。

ガラ紡

ガラ紡機は、明治時代に信州安曇野出身の僧、臥雲辰致(がうんたっち)によって発明された、日本で唯一の和式紡績機です。この技術は日本全国で広まり、やがて中国大陸やアジア各地へと伝わっていきました。

ゆっくりと糸を紡ぐ

そ現代の紡績機と比べると、ガラ紡機のスピードは約100分の1と非常に遅く、短時間で大量の糸を生産することはできません。しかし、その分、手仕事のような温かみと柔らかい風合いを持つ糸を紡ぐことができます。

③ 染める

益久染織研究所では、天然染料と化学染料を製品や用途に合わせて最適な方法を選んで、皆さまにお届けしています。

天然染料

天然染料は、中国では古くから漢方薬として使われてきた薬草等を利用しています。一部、植物から栽培したり、柿渋のように柿の実を絞りその液を3年以上寝かし、染料として使っています。

柿渋は、柿の実を絞りその液を3年以上寝かし、染料として使っています。染重ねや日光によって色の濃さを調整しています。

藍染めでは、ひとつひとつ手染めで10回から30回染め重ねを行います。この手間をかけた工程で、藍の色の深みが生まれます。

化学染料

化学染料には、発がん性物質を含まないアゾフリー染料を用いています。また、色の定着や、染色ムラを防ぐ助剤には、ソーダ灰(石鹸やガラスの原料)や芒硝(入浴剤の原料)を使っており、染色中に使う水の量も少なく、環境に優しい方法を用いています。

④ 織る

手紡ぎ糸やガラ紡糸は、もともと手織り機に向いた糸です。そのため、これらの糸を動力織機にかけるには、多くの困難が伴います。

当初、糸の特性上、手織り機では起こらなかった糸切れが頻繁に発生し、その過程は決して平坦ではありませんでした。

手紡ぎやガラ紡糸を動力織機にかける作業は、単に効率を追求するだけでなく、いかに手仕事の風合いを守りながらも、生産性を実現するかという、絶え間ない挑戦の連続です。

⑤ 補修する

一目ずつ縫うように糸切れを直す作業は、熟練した行員でなければできない、大変手間暇のかかる工程です。

生地の流れや糸の撚りを見極めながら、指先の感覚だけを頼りに一本ずつ補修していきます。この技術を身につけるには、最低でも三年、多くは十年以上の歳月を要します。 時間と経験の積み重ねがあってはじめて「布を蘇らせる”」ことができます。

⑥ 裁断する

手紡ぎやガラ紡で織られた布は、糸が均一でないため、布地の目が一定ではありません。

そのため、重ねて裁断することができず、一枚ずつ手作業でハサミを使って丁寧に裁断します。熟練の職人の手による裁断は、製品の仕上がりに大きな影響を与える重要な工程です。

⑦ 縫う・検品する

裁断が終わると、次は縫製の工程に移ります。縫製もまた、布地の特徴をしっかりと理解した熟練の職人が手掛けます。

日本国内で縫製を行うことが難しいほど、繊細で経験が求められる作業です。 生地一枚一枚に向き合い、慎重に縫い上げることで、製品の質を保ちます。

仕上がった製品は、丁寧に検品され、製品の仕上がりや今後の仕様について話し合います。その後、日本に出荷され、お客様のもとへと届けられます。